権利存続期間の図解

最終更新日:2019.7.3


存続期間というより消費期限

上の図。本「条文の図解」の存続期間のページを開くと、タイマーの他に、リンゴ、ドーナッツ、飲み物などが出てきています。存続期間は、いわば排他権という旨味の消費期限です。

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出願で20年のタイマーセット

特許権の存続期間の終了時は「出願日から計算」して、原則20年です。いわば、特許出願と同時に20年のタイマーが「カチッ」とセットされるイメージです。特許権の設定登録日(権利発生日)から20年ではありません。

 

出願日からカウントされる理由

もし、20年の開始時点が設定登録日からと仮定すると、大変なことになってしまいます。

例えば50年前に出願された発明がいまになってようやく独占権として成立して、「さぁこれから50年前に生まれた発明を20年間独占実施するぞ」となると、その発明に関する製品については殆ど誰も製造販売できなくなります。

だからこそ、発明時期と同時期であるとみなされる出願日が存続期間の起算基準とされています。

 

ビン詰めされた排他権の旨味

特許発明を独占排他的に実施できる期間は出願日から原則20年で終わってしまうため、出願してから審査に時間がかかって権利になるのが遅くなればなるほど、発明の「独占権という旨味」を味わう期間は短くなってしまいます(もちろん、権利化を急ぐ必要性があるわけではありませんが…)。

例えるならば、発明について特許出願すると独占排他権という旨味は「ビン詰め」されて用意されます。

その旨味は、もちろん、ビンの封をあけなければ味わえません。しかも、「ビンの蓋」を開けるには審査官(ときには審判官)のOKを貰わなければなりません。そして、その消費期限は「ビン詰め」されてから原則として20年間であって、「ビンの蓋」を開けても開けなくても(権利として登録出来てもできなくても)、消費期限の原則20年という期間は変わりません。

そのため、早めに「ビンの蓋」を開けることができれば(特許権を設定登録することができれば)、その旨味を永く長く味わうことができます。但し、もちろん「ビンの蓋」を開けられずに終わってしまうこともありますが。

特許権の排他権は、ビン詰めされた旨味であって、その消費期限は出願から20年(未開封でも同じ)であることを説明する図

(クリックして拡大)

ちなみに、消費期限は20年ですが…賞味期限は社会情勢・技術動向によって影響を受けます。

 

国内優先で実質的に+1年

原則20年の存続期間ではありますが、その期間を実質的に1年だけ伸ばせる方法(誰もが知ってる裏技)があります。

それは、国内優先出願(以下、国優出願)を使うことです。どういう事かと言いますと…国優出願の元となった特許出願(以下、基礎出願とも言います)にも記載されていた発明は、基礎出願の出願日時(国内優先出願日の最大1年前)を基準に審査されながらも、その出願日は、国優出願の出願日(現実の特許出願日)となります。

つまり、基礎出願にも記載されていた発明についての特許権の満了時は、国優出願の出願日から20年でありながら、基礎出願日からはMAXで21年となります。すなわち、国優出願をすることで、基礎出願の発明については存続期間を最大1年延ばすことができるようになります。

このように、特許権の存続期間を実質的に1年先延ばしにするというのは、事業のコア技術となりそうな発明については大企業においてよく行われていることですので、事業規模と発明の重要性を見極めて、必要に応じて国優出願制度を戦略的に使うのが良いと思います。

 

+5年の例外

原則20年の存続期間ですが「MAX+5年」という例外もあります。具体的には、医薬品・医療機器等に関する発明については、所定の許認可を得るために実質的に特許権を独占排他的に実施できない期間があったときは、その期間の相当分だけ、最大5年を限度に、特許権の存続期間が延長されます。


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