特許異議申立の図解

最終更新日:2019.7.3


江戸っ子2代目

特許料を納めて権利が設定登録されると、その旨と権利の内容が特許公報で公示されて、めでたし目出度し…ですが…「てやんでぃ」と言われたら、審査見直しです。

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特許異議の申立てとは?

特許公報の発行日から6月以内に、

この発明が特許されたことについて異議があります

という申立てがされると、特許庁は「特許したけれど、本当に適当だったのか」として再審理します。この申立てを「特許異議申立て」といいます。

 

申立ては、皆の利益

異議申立ては、権利設定から間もない時期に特許の是非を見直し、誤ってされた特許を取り消すことで、特許の信頼性を高めようとする制度です。特許の信頼性は、産業活動をする全ての者にとって重要であるため、法上の人であれば誰でも申立てできます。

特許是非の見直しは、特許権者の立場からすると

せっかく特許になって喜んでいたのに、また審理か…

と気持ちが落ちるかもしれませんが、早期に異議申立てという障害をくぐりぬけて権利として安定する方が、時間が経過して事業が広く展開した後に「その事業のコア技術は実は無効でした」とされるよりも有益であるとも言えます。

一方で、第三者にとっては、コンペチタの特許が誤ったものであれば放ってはおけませんので、特許是非の見直しは当然に利益になります。すなわち、本制度は、皆の利益を守るものなのです。

 

申立ての敷居は低い

本制度の利用に当たって庁へ支払う費用は2~4万円程度で済むことも多いので、金銭的に良心的な制度として設計されています。

また、申立てるときに単に「異議あり」というだけでは勿論ダメですが(例えば、新規性に違反している等の「理由」と「証拠」を示す必要があります)、審理はすべて書面で行われますので、申立ての敷居は比較的低い(身体的・精神的負担が少ない)と言えます。

このように申立て人に対する負担は少ない一方で、特許権者が請求項の記載を訂正した際には意見することもできるため審理に十分に関与でき、また、特定の請求項だけに異議を申立てすることもできるので、申立人にとって非常に使いやすいものになっています。

 

実は2代目

ところで…本制度は昔からあったのですが、実はH15に一度廃止されました。大活躍していた「一代目」は、無効審判があるから必要ないねと無下にされ、一度眠りにつきました。

しかし、その後、簡単に特許是非を見直す機会もやはり必要だということで、H26に「二代目」として復活しました。

異議申立マンは、特定の人しか助けてくれない無効審判マンに比べて、困っている第三者を簡単に助けてくれる皆(何人)の味方・ヒーローです。

また、二代目は、より自分の特徴を際立たせており、無効審判マンとの差別化を図りました。具体的には、申立人とのやりとりは全て手紙(書面)で済ませ、「ちょっと来て」(口頭)とは絶対に言いません。この点でも、申立人にとって使いやすい制度になっています。

 

審理はどうやって進むのか?

異議申立てがされると、まず、その旨が特許権者に知らされます。申立人が「請求項2は、新規性に違反している」として異議を申立てた場合、特許庁は、請求項2については新規性以外の進歩性、記載要件等についても再審理しますが、対象とされていない請求項(請求項2以外)については再審理しません。

そして、審理の結果、特許が誤っていたとされると、特許権者にその理由が通知され(取消理由通知)、審査と同じような形態で、意見陳述と、明細書・特許請求の範囲・図面についての訂正(審査段階の補正に相当します)の機会が与えられます。特許権者がその機会に訂正した場合は、その内容が申立人に送付され、申立人は意見書を提出することで、前述のとおり審理に関与できます。そして、訂正・意見を踏まえても、特許は間違いであったと判明したときには特許取消しになります。

一方で、間違いではなかったと判断されたときには特許維持です。なお、係る場合、申立人は、特許維持に不服申立はできません。別途、無効審判の場で争うことになります。


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