オススメ本


(著者:野矢茂樹)

知財専門家、必読の書

野矢先生の名著「論理トレーニング101題」。論理力を鍛えられる本…というより教科書です。問題と正解、そして模範解答がロジカルに説明されています。答えがあっていることが重要なのではなく、ロジカルに理由を説明できて満点。だからこそ論理力が身に着く。これ以上の論理力養成書はないのではないか。

ところで、この論理力…知財専門家に欠かせない能力です。特に、論理の権化ともいえる進歩性について、審査基準を理解し、要件違反に反論し、説得力をもって説明するには「論理力」が欠かせない。明細書執筆でも役に立つ。まさに、知財専門家にとって必読の書といっても過言ではないと思います(もっと早く出会いたかった)。とりわけ「Ⅱ章.論証する」は、最高なのではないかと強く思っています。



(著者:草薙龍)

気にするから、気になる

「反応しない練習」は、以前SNS上で話題になった本です。この名著は、承認欲求によって心が現象に反応してしまう現実があることを認めた上で、万物を比較せず/妄想せず/自他を判断せずにいなさいと説きます。そうすれば、無駄な心の反応が起きず、「あるものを、あると観る」ことができると言います。

この「あるものを、あると観る」ことは、モノゴトをそのまま観察するということなので、思考の基礎として極めて重要です。発明するときも、クレームをつくるときも、「あるものを、あると観る」ことができないと、あらぬ方向に行ってしまうからです。そうならないためにも、無駄な反応をしないようにしましょう…という、名著。クリエイティブな仕事の「心の環境」をつくるための導入本として、お薦めの一冊です。



(著者:嶋浩一郎)

人と違う意見を、もてる方法

嶋浩一郎さんのご著書「アイデアのつくり方」。10年以上前の本なのでSNSの例えや内閣の話は懐かしいのですが、この本の本旨は普遍的なのではないかと思います。雑多でカオス状態の情報を「交配」させ、人とは一味も二味も違う意見をもてる方法を教えてくれます。また、作中に「人は一度レッテルをつけてしまうとなかなか見方を変えられないという性質があります…多面体で生きている情報にとてももったいないことをしている」という言葉がありますが、これは、人と話をするとき、いつも心掛けておきたい「アイデアのつくり方」の核心だと思います。

発明者が発明の課題設定をするとき、技術リーダが事業リーダに企画提案するとき、知財専門家が事業部門に提案するとき、人と違う意見をもつことが求められています。オススメです。



(著者:丸島儀一)

IPランド…の極み

特許業界にいれば絶対に知っているであろう「丸島さん」のご著書:知的財産戦略。とても抽象的なタイトルですが、中身は『超・具体的』です。この名著は、事業知財についての実学書です。特許法を勉強するだけでは知り得ない「事業知財とは何たるか」を学習できます。知財実務は日々進化してるから、この1冊で知財戦略が網羅されているとは言えませんが、その事例と情報量の多さゆえ、読者の「知財見識」が広がるのは、間違いありません。

近年は、技術リーダ、事業部門トップの方々も、知財部門に負けないくらいに、知財見識をお持ちです。もし、現・リーダ、将来のリーダ候補から「知財を勉強できる本を紹介してほしい」と言われたら、この本はプレゼント候補の一つです。



(集英社)

人類の発明史…を漫画で

「学習漫画・世界の伝記シリーズ」(集英社)の中の1冊。発売日は約30年前です(現在も購入可)。著名なシリーズなので、内容の素晴らしさを改めて説明する必要はないと思いますが、特徴に言及すれば「300種類超の発明・発見が歴史とともに説明されており、網羅性と理解容易性では比類なき本」です。漫画だからスラスラと読めて、教養も身に付く。小難しい本だけを読むのが賢いわけではない。スラムダンクから学ぶことが多いように学習漫画シリーズから学ぶことも、また多いものです。

ところで、この本における「発明の定義」は一般的辞書に載っているものです。つまり、特許法上は発明と認められないものも沢山載っているため、知財専門家であれば「特29条1項柱書の要件は満たさないなぁ」等と呟きながら読む楽しみもあります。