一見、強く美しい言葉には注意がいる

「絶対に…だ」「極めて~な」「全く」などの修飾語。どれも、人に強い思いを伝えたいときには有用な言葉です。私も日常的に多用していますが(もはや口癖といわれる)、これらの言葉はビジネスにおいては、ときに有用ではなくなります。とくに、特許出願実務では、形容詞などは価値が極めて低い用語になりさがります。


TEXT BY SHIGERU KOBAYASHI


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わたしは日常生活で誰かと話すとき、「絶対に…だ」「極めて~な」「全く」などを多用する傾向があるようです。10年くらい前に親しい友人から指摘され、いまや自分でも認識している口癖のひとつです。

しかし、「弁理士として特許出願実務に当たる」というスイッチが「カチッ」と入ったら変わります。特許出願書類を作成するときや、特許出願戦術をクライアントさまに提案するとき、または、何かの記載を法的に解釈するときには、わたしの辞書からこれらの修飾語を消すようにしています。なぜならば、特許出願実務では、修飾語は価値の極めて低い用語になるからです。

たとえば、特許出願書類に含まれる「特許請求の範囲」(※特許にしたい発明の範囲を定める書類)を作成するときには、構造・作用・機能によって発明を特定し、目的・願望を表す文言も形容詞も使いません。

少しおおげさな表現ですが、特許請求の範囲の記載において、「ユーザに『よりよい』操作画面を提供する制御部」とか「『かつてない程に美しく滑らかな』ユーザ・インタフェース」などは絶対に使ってはいけません。使ったらギャグです。

また、特許出願書類に含まれる「明細書」および「必要な図面」に、これらの形容詞を記載することもありますが、それを請求項の記載の根拠にできない以上は、外国出願時の翻訳料金の観点から、あまりコスパの良い記載ではないと個人的には思います(自戒もこもっています)。

さらに、特許出願実務に限ったはなしではありませんが、形容詞や副詞などの修飾語が多用されたプレゼン資料は、盲目的な信用を得ようとしているのではないか/聴講者をはぐらかして思考停止にさせようとしているのではないかという印象を与えてしまうと、個人的には思っています。

日常生活でもビジネスでも、願望を表す言葉や形容詞、美しく、頼もしい言葉は、人が人に思いを伝えるときにはとても有用な言葉だと思います。しかし、少なくとも特許出願実務では、あまり使わない方がいい言葉だと思っています。発明者・出願人が求めているのは、「強固な特許群」などという抽象的な表現ではなく、具体的な提案だからです。



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