最終更新日:2019.6.30
審査請求は2度目の挨拶
特許出願後、そのまま何もせず、庁から何か言われるのを待っていたら…三年が過ぎた頃、出願人自身が出願を取下げたことになってしまった…何もしていないのに…ではなく、何もしていないから。
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日本国特許法では、特許出願をしたら3年以内に、「この特許出願について実体審査をお願いします」と特許庁に求めなければ、新規性・進歩性などの特許要件を満たしているか否かの審査は行われません。
この「お願い」を「出願審査の請求」といいます(俗に、審査請求といいますが、正式には出願審査の請求です)。
そして、原則として3年を超えても出願審査の請求がされないときには、この特許出願について権利化はしなくてよいという意思表示とみなされ、自ら出願を取下げたことになってしまいます。
手続が増えるから一見面倒な制度にも思われるのですが、実は、とても良心的な制度です。
出願にはH30年時点で14,000円しかかかりませんが(特許庁に支払う金額であって、代理人費用は別です)、出願審査の請求には、
かかります(2019.4.1改訂※1)。
出願にかかる費用は低額だけれども、審査してもらうためには、当然ですが、それなりにお金がかかります。
もし仮に、特許出願と同時に特許要件の審査もしてもらえる制度であったと仮定すると、最初から庁に20万円程度の金銭を支払う必要があるわけです。でも、もしかしたら、その発明は、それに係る事業の状況によっては、途中で権利化の必要性がなくなるかもしれません。
そうすると、お金がもったいない…。
でも、日本国特許法には、出願審査請求制度があります。本制度があることで、まず、特許出願をすることで、低額な出費に抑えながら、審査基準時となる特許出願日(時)を確保できます。そして、3年の間に、
本当に出願審査の請求をして権利取得する必要があるのか
を検討できるのです。
現行制度下においては、出願審査の請求をした後であっても、審査官が審査を開始する前であれば、特許出願を取下げて審査請求料の返還請求をすることで、審査請求のために支払った額の半分が返金されるという制度があります。それでも、やはり、3年の間に「本当に権利化が必要か」を検討する時間をもらえるのは有難いことです。
例えるならば、特許出願は、出願日と出願番号を記録してもらうための「1回目の挨拶・お願い」です。そして、出願審査の請求は、特許庁審査官に審査してもらうための「2回目の挨拶・お願い」です。
いずれも、手続の際には、「長官殿!」と特許庁長官にお願いをしなければなりません(特許出願および出願審査請求書の宛名には「長官」を記載します)。
以上のとおり、日本国特許法においては、特許要件を審査してもらうためには、特許庁長官に2回挨拶する必要があります。なお、ここでは記載を省略しましたが、審査請求制度には、他にも、請求人適格、減免制度などの所定の規定があります。
※1.出願審査請求料金は、2019.4.1付けで改訂されています。詳細は、特許庁ウェブサイトからご確認頂けます。