特許法は、「発明を保護する側面(発明者のメリット)」と「発明の利用を促す側面(第三者のメリット)」という互いに反する性質をもち、それらを互いに反発させて、引き合わせながら、「真ん中」にいようとしています。この構図は、自然という調和を成り立たせるための陰陽論の構図そのままだと思います。
TEXT BY SHIGERU KOBAYASHI
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本サイトでは、実務上、極めて重要な特許法条文を厳選し、図解する「条文の図解」コンテンツを作成し、公開しています。
このコンテンツは、エキスパートでなくても特許法の重要な規定を理解しやすいように説明していますが、ただそれだけではなく、法律の規定の本質的な部分を言語化しているコンテンツでもあります。ただ、法律の規定の解説コンテンツですので、それ以上の私的な考察はできるだけ省いて記載しています。
ところで、この中に、「法目的の図解」という記事があります。この記事の中身は、特許法の法目的を、どんな人でも持ち合わせているポジティブな心とネガティブな心に基づいて理解しようというものなのですが、上記の通り、私的考察はできるだけ省いています。
そこで、今回のブログでは、法目的の解説で書きたかったけれども、コンテンツ作成方針に沿わないということで書かなかったことを記載します。
「法目的の図解」にも記載しておりますが、
特許法は、「発明を保護する側面(発明者のメリット)」と「発明の利用を促す側面(第三者のメリット)」を持ち合わせ、互いに引き合わせて反発させながら、独占実施保障という特許法の第一義的な存在価値が、バランスのとれたものとなるようにしています。
この「互いに引き合い、互いに反発」という構図…陰陽論に基づく言葉「陰陽和して元となす」という構図と極めて似通っていると思います。
陰陽論とは、世の中に存在する万物は陰と陽という2つのカテゴリに分類でき、それらに分類されたものは、互いに反発するけれども、反発する対象がなければ存在できない(引き合う)とする思想です。
具体的に陰陽の関係にあるものを挙げると、例えば、「精神的-物理的」「植物-動物」「女性-男性」「夜-昼」などです。
そして「陰陽和してもととなす」というのは、陰陽のどちらかに傾くことなく、バランスよく調和がとれて初めて「自然」という調和が成立しているということです。たとえば、夜の時間が長いと「陰」、昼の時間が長いと「陽」ですが、春分の日と秋分の日は昼夜の時間的なバランスがとれた、一年365日のなかでも、調和とバランスのとれた日であるという考え方になります。
特許法の「発明を保護する側面」と「発明の利用を促す側面」の関係も、互いに反発し合うけれども、一方がなければ互いに存在できないものです。
そして、特許法は改正を繰り返すことで、陰に振れながら、ときには陽に振れながら、独占実施保障をバランスのとれたものにしようと(真ん中にいようと)努力しています。まさに、これは特許法が「陰陽和して元となす」という構図を目指し、「自然」という調和を成立させようとしているように思えます(ブログ:特許物語にも通ずる話になってきました)。
陰陽論の有名な具体例として、「女性-男性」「精神-物理」が真っ先に挙がりますが、「発明の利用-発明の保護」も、その仲間に入れてもらいたいものです。
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