法律用語「相当の」は日常用語と違う

「相当」は日常用語としても使われますが、法律用語における「相当」の意味は日常用語のそれとは全く異なります。日常用語では「程度が甚だしい」という意味で「相当」を使いますが、法律用語では全然ちがいます。特許実務において、日常用語の「相当」の意味と誤解すると、答弁書提出期間・意見書提出期間の日数が可笑しくなります。


TEXT BY SHIGERU KOBAYASHI


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「相当」という言葉は、日常生活でも「相当、うれしい!」のように「程度が著しく甚だしい」という意味で使われますが、法律用語として使うとき、その意味とは全く異なります。 

法律用語における「相当の~」とは、「合理的な~」、「妥当な~」、「(社会通念に照らして)ふさわしい~」という意味で用いられます。 特許法の条項での用例を見てみると、例えば、特134条第1項では、 

『審判長は、審判の請求があつたとき…相当の期間を指定し…答弁書を提出する機会を与えなければならない』(特134条第1項/一部省略) 

のように用いられ、答弁書提出のために与えられる期間は「合理的な期間」「妥当な期間」でなければならないと規定されています。 

ちなみに、その応答するのに「合理的な期間」「妥当な期間」は、手続の種類および性質に鑑みて、「標準指定期間:60日」に設定されています。  

ところで、日常用語として使われる「相当の…」の意味は、「程度が甚だしい」という意味です。 ですから、もしも、法律用語としての「相当の」の意味を日常用語の意味とはき違え、上述した特134条1項等の「期間を定める規定」を間違えて解釈してしまうと、次のように、非常にアバウトな内容になって可笑しくなります。 

答弁書の提出や意見書の提出は 

と~っても長い期間かかっても構いません!? 

こうなってしまっては、審査の迅速性・画一性が損なわれて、特許制度自体が破綻し兼ねませんし、そもそも…そんなものは法律でも何でもありません。 

特134条1項の他にも、特許法の条項においては、この「相当の期間」という表現は多用されています。例えば、 

  • 特17条3項の手続補正 
  • 特18条の2第2項の弁明書提出機会 
  • 特39条6項の協議結果の届出 
  • 特50条の拒絶理由通知 
  • 特133条1項の審判請求書の補正命令 

が挙げられます。なお、特35条4項においても「相当の」が用いられ、 

「従業者等は…相当の金銭その他の経済上の利益(…「相当の利益」という。)を受ける権利」 

のようになっていますが、日常用語としての「相当」で解釈してしまうと、発明者にとってはハッピーですが…さすがに、まずいですよね!? 

法律用語「相当の」。日常用語の意味とはき違えてしまうと知財専門家としては恥ずかしいので、教養として身に着けておかなければならない用語です。



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