前項に規定する場合 vs. 前項の場合の図解

特許法の勉強をするとき、塾に通っても、参考書を買っても「条文の趣旨は~であって、事案に適用すると***となる。具体的には…」と懇切丁寧に教示してくれるので、一から特許法を読み下して、条文を自力で理解しなくても済みます。でも、自力で条文を読み解く力も持っていたい。そのためにも、標題の識別は欠かせない。図解が簡単。


TEXT BY SHIGERU KOBAYASHI


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「前項に規定する場合…」と「前項の場合…」は、それぞれ前項の規定において「係る部分」が異なります。具体的には、

「前項に規定する場合」は前項の条件節に係る

「前項の場合」は前項の全体に係る

となるのですが、ともに「前項」「場合」という言葉を共通して含むため、

どっちが条件節(場合)に係って、

どっちが全体(前項)に係るのか?

を混同しがちです。ですので…図解で直感的に説明します。

「前項に規定する場合」の図解

「前項に規定する場合」を文法的に説明すると、『「前項に規定する」という形容詞句が「場合」を修飾している』となりますが、下図の方が直観的に理解できます。

(クリックして拡大)

「前項に規定する場合」は、「前項の場合」に比べてフレーズが長い…ですから、例えるならば「長距離走」です。長距離走は、スタートも大事ですが「後半」の追い込みでスピードを維持できるかが大事なので、「前項に規定する場合」においても後半に位置する「場合」の方が重要という比喩ができます。無理矢理感はありますが、

「前項に規定する場合」はフレーズが長いので、後半の「場合」が重要で、条件節(場合)に係る法律用語

と直感的に覚えられます。

「前項の場合」の図解

「前項の場合」を文法的に説明すると、『「(前項)の」という助詞により「前項において」という意味解釈になる』となりますが、下図の方が直観的に分かります。

(クリックして拡大)

「前項の場合」は、「前項に規定する場合」に比べてフレーズが短い…ですから、例えるならば「短距離走」です。短距離走は、「前半」の「よーい、ドン!」が大事なので、「前項の場合」においても前半に位置する「前項」の方が重要という比喩ができます。無理矢理感はありますが、

「前項の場合」はフレーズが短いので、前半の「前項」が重要で、前項(全体)に係る法律用語

と直感的に覚えられます。

特許法での用例

例えば、特164条を見てみると、第2項の「前項に規定する場合(を除き)」は、第1項の条件節である「…特許をすべき旨の査定をするとき(を除き)」を受けており、これにより第2項の規定は、「審査官が特許をすべき旨の査定をする場合以外では、補正について却下決定をしてはならない」と定めていると理解できます。

また、特44条を見てみると、第2項の「前項の場合…」は第1項の条件節である各号を受けるのではなく全体を受けており、これにより第2項の規定は「新たな特許出願(分割出願)をした場合は、もとの出願時にしたとみなす」と定めていると理解できます。

参考までに、特許法(平成30年法律第33号改正)の規定では、「前項に規定する場合…」が用いられる条項は、特164条の他、特92条(実施権設定の裁定)、特133条2項(方式違反の場合の却下決定)があります。また、「前項の場合…」が用いられる条項は、特44条の他に、特70条2項(特許発明の技術的範囲)、特92条5項(実施権設定の裁定)、特134条の2第3項(訂正の請求)、特180条2項(出訴の通知)があります。

ちなみに、特92条の各項の規定においては「前項に規定する場合…」と「前項の場合…」とが一緒に登場しており、条文の読み方が少し難しくなっています。



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