早期審査ミスのクリア=テクニーク

最終更新日:2019.11.21


早期審査の結果、一発特許査定で国優機会を逸した際のフォロー

出願後すぐ早期審査し、拒絶理由なしに特許査定を受領して国優出願できなくなっても、改良発明を国内で権利化する途…時間はタイトだけど、あります。

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出願後すぐの早期審査請求は計画的に

特許出願に係る発明を直近で実施したいなどの事情があるとき、特許出願後すぐに出願審査請求&早期審査請求をすることがあります。係る場合、審査請求時の特許請求の範囲について拒絶理由がなければ、出願から半年もかからずに特許査定を受領できます。

特許査定を受領すること自体は良いことですが、何の対策もせずに一発特許査定になると、マズイことが1つあります。それは、特許査定を受領すると、それと同時に査定が確定してしまい、国内優先出願(以下、国優出願)をする機会がなくなってしまうことです(特41条1項4号)。

そのため、重要な発明に係る特許出願について早期審査請求するときには、出願人に追加発明をする意思または計画を確認し、“国優出願する余地を全く残さなくてもよい”という事情がある場合を除き、

  1. 当該特許出願について拒絶理由が通知されるようにする
  2. 当該出願を分割し、分割出願について早期審査請求する

の2つのうち少なくとも一方を行っておくことが適切です。

 

一発登録になって“しまった”ときの改良発明

しかし、何らかのミスによって(1)、(2)いずれも採られず、早期審査請求した出願が半年足らずで特許査定が確定してしまった場合、出願日(優先日)から1年経過していないにもかかわらず国優出願することができなくなってしまいます。

係る場合、追加発明・改良発明について⽇本国内で権利化する途はないのか?というと…許される時間は極めて短いですが、あります。それは、特許査定を受領した後、特許公報が発行されるまでの間に、追加発明・改良発明について、別途の新規出願をすることです。

具体的には、特許査定を受領した後、30⽇以内に第1年分から第3年分の特許料(設定登録料)を納付すると特許権が設定登録され、2~3週間の後に特許公報が発⾏されます。特許公報が発⾏されれば明細書等に記載された内容は公知になり、新規性・進歩性を否定する原因になりますが、特許公報の発⾏前であれば、別途、追加発明・改良発明について新しく特許出願をすることで、これらの発明について⽇本国内で権利化することが可能です。

特許査定を受領してから余り時間はありませんが、先の出願書類をベースに追加発明・改良発明を明細書に記載する時間としては⼗分と⾔えると思います。

追加発明・改良発明について検討時間を更に要する場合には、特許査定の謄本送達⽇から30⽇以内に「期間延⻑請求書」を出願⼈⼜は代理⼈が特許庁に提出することで、納付期限を30⽇以内に限り延⻑することができます(特108条3項)。但し、期間延⻑請求には、所定の⼿数料が必要です。

これにより、特許査定受領から最⼤で60⽇+2週間程度は、追加発明・改良発明の特許出願に時間を使えます。また、特許公報の発⾏⽇は、特許登録番号が通知された後に、特許庁に問い合わせることで参照することができます。

 

図解

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本テクニークを行う際の注意点

但し、本テクニークを行う際には2つの注意点があります。

注意点1.特29条の2

別途の新しい特許出願に記載された追加発明・改良発明が、先の出願の明細書等に記載された発明と実質的に同⼀であると判断される場合には特29条の2が適用されうるため、その適用除外を受けるためにも、(ⅰ)発明者が完全同⼀(特29条の2かっこ書)、⼜は、(ⅱ)出願⼈が完全同⼀(特29条の2ただし書)とするよう注意が必要です。

ただし、先の出願に係る発明に周知技術を追加しただけなどの場合には、ダブルパテントも論点になりますので、その点は注意が必要です。

注意点2.新規性喪失の例外

出願後すぐに早期審査請求している場合、出願した発明に係る商品・サービスを出願後すぐにリリースしている場合もあるかと思います。係る場合には、当該リリースは新規性を喪失する行為に該当しうるため、追加発明・改良発明について新規出願するときに新規性喪失の例外の適用を受ける必要があります。

これは、国優出願できる場合にも共通することですが、商品・サービスのリリースをする場合には、その後の特許出願(国優出願の場合も含む)で新規性喪失の例外の適用を受けるためにも、「公開の事実」と「特許を受ける権利の承継の事実」はきちんと整理しておく必要があります。



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