分割×早期審査×国優=テクニーク

最終更新日:2019.9.4


所望の権利を獲得する確率を上げる戦術2

出願後すぐに分割出願を行い、当該分割出願について審査請求&早期審査請求をする。そして国内優先出願(以下では国優出願とも言います)を駆使することで、所望の権利を獲得する確率を上げつつ、さらに、いつまでに完結させればよいかという時間管理ができます。

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「早期審査×国内優先」の改良版

※本記事は事前に「早期審査×国内優先=テクニーク」を把握されていることを前提に執筆しています

記事:「早期審査×国内優先=テクニーク」(以下、テクニーク1)にて、所望の権利を獲得する確率を上げる手法について説明しましたが、テクニーク1では、拒絶理由通知に対する応当のタイミングと、国優出願のタイミングとを調整する煩わしさがありました。

そこで、テクニーク1の改良版として、「分割×早期審査×国優=テクニーク」(以下、テクニーク2)を本記事で紹介します。テクニーク2によれば、「国優出願をいつまでにすべきか」という期限を積極的に管理でき、さらに、テクニーク1に対して6週間~7週間くらい長く追加発明の検討時間を確保できます(但し、分割出願をする分だけ費⽤が余計にかかる)。

 

改良版の具体的な内容

テクニーク1では、特許出願したら、当該出願について出願審査請求&早期審査請求を行い、拒絶理由通知を受領することで出願書類に補充すべき事項を明らかにさせ、さらに、当該出願を国優出願の基礎にもしました。これに対してテクニーク2では、特許出願したら、当該出願について分割出願を行うことで、

  • 拒絶理由通知を受ける出願
  • 国優出願の基礎として用いる出願

に役割を分担させます。

1.拒絶理由通知を受ける出願:分割出願

拒絶理由通知を受ける出願として用いるのは、分割出願の方です。分割出願を国優出願の基礎にすることはできないため(特41条1項2号)、これは必然の選択です。

具体的には、分割出願について出願審査請求&早期審査請求を行い、受領した拒絶理由通知を基に、所望の特許権を取得するために足りない事項を考察します。但し、特39条2項に該当しないためにも予め親出願の特許請求の範囲の記載と、審査にかける分割出願の特許請求の範囲の記載とは異なるものとしておく必要があります。

2.国優出願の基礎用の出願:親出願

一方で、国優出願の基礎用の出願は、親出願(分割元の出願)を当てます。つまり、親出願は、分割出願についての拒絶理由通知の考察から創出した追加発明を含めた国優出願の基礎用として、大切に取っておきます。

このように2つの出願を用意して役割分担をさせることで、審査請求にかかる分割出願について特許査定を受領したとしても、当該査定の確定が、親出願を基礎にする国優出願の時間的制約に影響しなくなります。つまり、テクニーク1の記事における注意点1&2の制限から解放されます。

そして、本テクニーク2における国優出願の実質的な期限は、テクニーク1のそれよりも先送りでき、分割出願についての特許公報の発行日になります。特許公報の発行日とする理由は、特許公報が発⾏されると分割出願の明細書等に記載された発明が公知となってしまい、国優出願に係る追加発明の審査について非常に不利になるからです。

なお、公報発行日は、特許権の設定登録の後、2~3週間とされています。特許公報の具体的な発⾏⽇は、特許登録番号が通知された後に特許庁に問い合わせることで参照できます。

 

図解

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テクニーク2を行う際の注意点

なお、テクニーク1でも言及したとおり、国優出願は基礎出願から1年以内にしなければならない点には留意しなければなりません。また、早期審査にはデメリットもあります。実際に行う際には、出願人、発明者の方への説明責任を果たす必要があります。



分割×早期審査×国優=テクニーク