短文(クレーム)作成の感性を磨きたい

沢山の伝えたいことがあるけれども、それを短い文章で伝えなければならない。それは簡単なことではありません。40000文字で言いたいことを書き連ねていくよりも、言いたいことを40文字におさえなければならないことの方が大変な場合もあります。特許出願書類のクレームが、まさにそれ。だからこそ、短文を創る天才に憧れてしまいます。


TEXT BY SHIGERU KOBAYASHI


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クレーム(請求項)の記載は、少ない文字量で、明確に、多くのことを伝えなければなりません。明細書では2万文字~4万文字にもわたって発明を解説しますが、クレームでは、明細書のエッセンスを5行程度の1センテンスで表現することが求められます。

そして理想的には、クレームは、それを見た誰もが同じものを、例えば、構造/機能/システム/方法などを、頭に思い浮かべることができるように記載することが求められます。

クレーム作成作業は、出願業務を主担当とする知財専門家にとって楽しいものですし、人生の娯楽の一つであると言っても過言ではないと思います。

しかし、ときに大変だし、特に業界に新入りしたばかりの頃は、納得のいく1センテンスを作成するのに短くない時間がかかってしまうこともありました。兎に角、よいクレームをつくるには、能力・スキル、経験のほか感性も必要だと思っています。

そんなときにいつも思うことがあります。「松尾芭蕉は、あの名句を創るのに、どのくらい時間がかかったのだろうか」と。

その文字量、たったの17音からなる俳句。

たったの17音だけなのに、その言葉がつくりだす情景を明確に頭に思い浮かべることができます。あの名句を読んだ誰もが、同じ情景を頭に思い浮かべます。言わずもがな、松尾芭蕉は天才ですが、小生にとっては、「憧れの天才」です。

「古池や蛙飛びこむ水の音」

天才のことを心の底から天才だと思うのは、自ら、実際に同じ分野で同じことにチャレンジする経験をもって腑に落ちるのではないかと思っています。

例えば、サッカーで言えば、メッシ、ロナウド、ジダン、ベッカム、中田英寿、他の多くのスター選手たちも天才だと思いますが、サッカーが全くできない自分にとっては、その華麗なドリブルやシュートをみて「天才!」と興奮しても「天才!!!」ほどのテンションには到達しません。

でも、10年以上にわたってクレームを作成してきた自分にとっては、「!×20」くらいのテンションで、俳人・松尾芭蕉を天才だと思っています

たったの17音からなる美しい文章、しかも、それを見た誰もが同じ様な情景を思い浮かべる。クレーム作成に必要な感性を磨くうえで、俳人に学ぶことは少なくないと根拠なしに感じています。



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