特許出願書類における「必要な図面」の意味

誰かに何かを伝えるとき、言葉だけで説明するよりも図面を用いて説明した方が理解が早まりますが、通常は、図面だけで情報を正確に伝えることは難しいため、図面は概して、言葉による説明の補助的な役割を担うものとして扱われます。特許法でも、願書に添付する図面は「必要な図面」(特許法36条2項)と規定され、願書への添付は任意とされています。




特許出願書類に添付する図面は特許法36条2項において「必要な図面」と規定され、願書への添付は任意とされていますが、実際には、図面が添付されていない出願書類を見たことはありません

その理由はいくつかありますが、そのうちの最も明快な理由は(当然ですが)

  • 図面を用いた方が説明がしやすいから

例えば、サーバ技術に関する発明の出願書類の明細書において、サーバ装置とクライアント装置との間でネットワークを介して通信するシステムを説明するとき、シーケンス図を用いて説明するのとしないのとでは、説明のしやすさに雲泥の差があると思います。

また、全ての技術分野に通用する話ではないですが、他の理由として、

  • 権利行使を想定したより良い権利を取得するためには、図面が実質的に必須の添付書類である技術分野もある
ということも言えます。

例えば、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の場合には、グローバルで権利化を図るのであれば、フローチャートは実質的に必須になりますので、優先権主張の効果を考慮しても日本特許出願の時点から図面は実質的に必須の添付書類という扱いになります。

より具体的に説明しますと、MPF(ミーンズ・プラス・ファンクション)クレームに対応する構造はアルゴリズムですから、その処理手順を説明するためのフローチャートは「あった方がいい図面」ではなくて「必須の図面」です。

特許出願の技術分野にもよるのかもしれませんが、結局のところ、図面の願書への添付は、日本特許出願においては任意とされていても、グローバルで権利化をしたいのであれば実質的に必須なのだと思います。

ところで、冒頭に記載した「通常は、図面だけで正確に情報を伝えることは難しい」についてですが、図面だけの方が圧倒的に分かりやすい事例が少なくとも1つあります。

それは、「無限等比級数」の図解です。例えば、初項:1、公比:1/2の無限等比級数を計算しなさいと言われると理系の人間でも少し考えてしまいますし、理系でなければ「?」になると思います。しかし、図解してしまえば小学生でも一発で「2!」と答えられると思います。



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