「補償、保障、保証」特許実務での使い分け

特許実務をしていて「ほしょう」という言葉は、契約書締結の場面で、条文を読んでいる場面で、見られます。そして、「ほしょう」には同音異義語として3つ:補償/保障/保証があります。意味の違いによって識別するのではなく、イディオム的に慣れ親しんだ特許用語を含む具体的な用例によって覚えれば、小脳の記憶領域に保存できます。 


TEXT BY SHIGERU KOBAYASHI


スポンサードリンク


「ほしょう」をPCで入力変換すると、色々な漢字の変換候補が出てきます。意味を知らないと、どれを使うべきか迷うかもしれません。特許実務でも「ほしょう」は頻出なので、識別が大切です。 

特許実務で、契約書を作成するとき、条文を読んでいるとき、「ほしょう」という言葉によく出会います。特許実務で使う「ほしょう」には、少なくとも 

  • 「補償」 
  • 「保障」 
  • 「保証」 

の3つの同音異義語があります。 

補償はまだしも「保障/保証」は混同しがち。こういうときは意味を丸暗記するより、「〜という用例では補償/保証/保障」というように、イディオム的に覚えるのが鉄則です。 

補償

「補償」は、「損害を補い償うこと、損失等を埋め合わせること」(大辞林第三版,三省堂)という意味です。 特許実務においては、「補償」が使われる用例と言えば、「補償金請求権」(特許法65条1項)です。「補償金請求権」は、次のような権利です。 

出願公開された発明が第三者に無断で実施されることは違法行為ではないものの、出願人にとっては損失になり得るため、その出願人の損失を補償するために認められる金銭債権 

まさに、出願人の損失を「補い償う」権利ですので、「ほしょう」金請求権の内容を知っていれば、「補償」であることは比較的簡単に覚えられると思います。 

保障

「保障」は、「責任をもって安全を請け合い、一定の地位や状態を保護すること」(大辞林第三版,三省堂)という意味です。 

「保障」は、特許法の条文には登場しませんが、「特許権が設定登録されることで、特許権者は、独占排他的に特許発明を業として実施する権利が保障される」というように使われます。 

ところで… 「保障」の「障」は、障壁・障子にも使われるように「隔てて、防ぐ・守る」という意味が含まれています。上の用例は、まさに、特許権の設定登録により、特許権者に差止請求権者としての地位が生じて、第三者との間に障壁が作られる構図になっています。 

権利登録で第三者との間に「障壁」ができることで、独占権が「ほしょう」=保障される 

とすると覚えやすいかもしれません。

保証

「保証」は、「間違いなく大丈夫であろうと請け合うこと」(大辞林第三版,三省堂)を意味します。「保証」は、「保障」と同様に、特許法の条文には登場しませんが、特許絡みの契約書には頻繁に登場する用語です。 というのも、「証(あかし)」とは「責任」だからです。

例えば、B2Bビジネスにおいて共同開発契約を締結する際、「特許保証」という条項が設けられることがあります。 

「特許保証」とは、譲渡された製品等が第三者の知的財産権を侵害しないことに「責任」をもつことです。特許について責任を負う…まさに「証」ですから、特許「ほしょう」=保証と覚えやすいと思います。 

このように、意味を混同しそうな同音異義語はイディオムで覚えるのがよいと思います。大学受験の勉強で使った「イディオム・カード」のように。

なお、法律の条文や契約書には登場する「ほしょう」ですが、特許出願の書類(明細書、特許請求の範囲等)の記載においては、補償/保障/保証のどれも登場することはあまりないと思います。 強いて言うならば、コンピュータ・ソフトウェア関連発明の分野においてビジネスモデル特許であれば補償/保障/保証が登場するかもしれません。 



スポンサードリンク