出願業務に欠かせない本質を掴む能力

以前、大変お世話になった上司(ボスsの中のボス)に「特許出願業務、権利化業務をする人間にとって一番大切なものってなんだと思う?」と聞かれたことがありました。小生は大したことを答えられなかったと思いますが、そのときボスsの中のボスが教えてくれたのが標題の「本質を掴む能力」です…御意。



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特許出願を担当業務とする知財専門家にとって、業務において欠かせないスキル・能力はいくつかあると思いますが、そのうちの1つは、発明者から説明してもらった発明の内容の全体像を捉えたうえで発明の最も重要な部分(コア)となる部分を見出し、それを言語で表現するスキル・能力であると思います。

例えば、構造物の発明について発明者から説明をして頂く場合において、発明に係る構造物の全体のうち、どの部品が発明の技術的特徴部分なのかを説明してもらったとき、その部品そのものを発明特定事項とするのではなく、その部品の機能・作用のうち課題を解決する直接的な原因となっているもの(本質)を抽出し、その抽出したものを言葉で表現することが大切だと思います。

なぜならば、その作業がクレーム作成の第1歩だからです。

もし、特許出願のための打ち合わせをしているときに、発明の本質を抽出して言葉で表現し、それに対して発明者から「言いたいことは、まさにそれ」と言って頂ければ、特許請求の範囲の作成工程の半分は終わったも同然だと思います。

そして、その上で、その本質的な機能・作用を具現化する構造物を諸々挙げていき、それを包括する上位概念と、具体的な下位概念と、抽象度がそれらの中間に位置する程度の中位概念とを言語で表現し、発明者との間で共通認識を持つことができれば、明細書を作成するうえでの筋道が1本「ズバッ」と通ると思います。

もちろん、出願業務を担当する知財専門家にとって他にも大切な能力・スキルはあると思います。例えば、アイデアを増強するコメントをすることも発明者には喜ばれることですし、とても大切なことだとは思います。

ですが、そうであっても「アイデアをシンプルにして、発明の本質を見出すこと」こそが、特許出願業務を行う知財専門家にとっての最も大切なこと=本分なのではないかと思っています。

因みに分野は違えど、佐藤可士和さんは、モノゴトをシンプルにしていき、最後に残ったものが「コンセプト」であると仰っています。そして、ワゴン車とは何かという本質を観察して、「こどもといっしょにどこいこう」を創り出されたようです。



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