法律用語:「本文」など条文各部の呼び名

特許法などの条文において、条項の文章の各部には、たとえば「本文」のような「呼び名」が与えられています。この「呼び名」は、単に条文に名前を付けてあげたというものではなくて、条項aとは異なる他の条項bにおいて、条項aの一部を引用するために使われています。



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特許法などの条文においては、たとえば、次に示す特17条2項の例のように、他の条項の文章の一部(※特17条2項の例示においては“前項”つまり“1項”)を引用する場合があります。係る場合には、「他の条項の規定の一部」が“どの部分を指し示しているのか?”が明確でなければなりません。そうでなければ、条文の解釈が幾通りもできてしまいかねません。

そのため、条文の各部には、「本文/ただし書」などのような「呼び名」が与えられており、引用する場合には当該「呼び名」で引用箇所を明確にしています。

たとえば、特17条の例では、1項は「手続をした者は…補正…できる」「ただし…補正…を除き…できない」というように2つの条文が含まれています。このように、1つの項が2つの条文を含み、且つ、後半の文章が「ただし~のときは…」と記載されているとき、前半の条文を「本文」、後半の条文を「ただし書」と呼びます。

「本文」は当該条項における「原則」規定に当たり、「ただし書」は当該条項における「例外」規定に当たります。これらの呼称は、特17条2項に登場しているように、法令用語です。なお、「ただし書」は、特許法などの法律文書では「但書」というように漢字では記載されていません。

また、「本文/ただし書」の他にも、「柱書/各号列記部分」という「呼び名」もあります。

たとえば、特29条1項の例では、「産業上利用…できる発明…特許を受けることができる」という条文に続いて、新規性のない発明が「号」(漢数字)として3つ列挙されています。このように、1つの条項のなかに、各号が列記されているとき、冒頭の条文を「柱書(はしらがき)」、各号の部分を「各号列記部分」と言います。

「柱書」および「各号列記部分」は条⽂の構成として区別されており、例えば、特29条1項の例では、「柱書」はいわゆる産業上利⽤可能性を規定し、「各号列記部分」はいわゆる新規性を規定しています。

なお、「柱書/各号列記部分」の構成は、特29条1項のように「項」を構成するためだけのものではなく、たとえば特49条のように、「条」を構成するためにも用いられます。

ところで、「柱書」は実は俗称であって法令用語ではありません。法令⽤語では「各号列記以外の部分」といいます。その証拠に、条文(附則を含む)において「柱書」は文言として登場しませんが、「各号列記以外の部分」は文言として登場します(参照:特許法の附則(昭和62年5⽉25⽇法律第27号)の第3条)。



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