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Q.008 特許出願書類の作成の分担についてですが、作業はすべて知財専門家に任…

特許出願書類の作成の分担についてですが、作業はすべて知財専門家に任せた方がよいのでしょうか。それとも、発明者も積極的に出願書類作成に関与した方がよいのでしょうか。作業の分担について、よい按排があれば、教えてください。




弁理士からの回答

特許出願書類のベストな分担比率を、一律に言うのは難しいです。案件によって事情が変わるからです。ただし、知財専門家が100%作成するより、発明者も関わった方が、権利としての価値は高くなると、私は思います。

理由は2つ。1つは、技術の理論的な誤りの修正箇所は、発明者の方が気付きやすいということ。もう1つは、アイデアを広げるためです。

1.技術の理論的な誤りの修正

大前提として、出願書類は知財専門家が殆ど記載します。一方、「明細書に文字でおこすことで技術の理論部分の誤りに気付いた」という発明者の声もあります。また、知財専門家は、技術説明の「論理的な誤り」には気付いても「理論的な誤り」には気付きにくいです。このような理由から、発明者が関与することにメリットがあります。

2.アイデアを広げる

幾人かの発明者からお聞きしましたが、「フローチャートなど、発明の本質的な部分を説明するための図面を描いていると、発明のバリエーションを思い付く」という声もあります。

これらから、質問に対する一応の回答としては(定性的ですが)、次のようになります。

  • 特許出願書類は、基本的には、弁理士が殆ど書く方がよい
  • 但し、技術理論の説明は、発明者も関与した方が更によい


回答の詳細な説明

特許出願の書類作成における、発明者と知財専門家の作業分担のベストな比率を一律に言うことは難しいです。出願を急ぐ、規格案件である等、個別の事情によって変わるからです。

ただ、個人的な経験から言えば、発明者の方も明細書の作成に関わった方が、出願書類の品質、ひいては権利としての価値は高くなると思います。

理由は、2つあります。1つは、技術の理論的な誤りの修正箇所は、発明者の方が気付きやすいということ。もう1つは、アイデアを広げるためです。

1.技術の理論的な誤りの修正について

出願書類には、権利書面としての性格と、技術文献としての性格があると言われ、出願人にとっては権利書面としての充実を図ることが大切です。

そして、権利書面としての充実を図るためには、書類の記載を

  • 法的な側面(特許要件への適合)
  • 技術的な側面(技術理論を正しくする)

の両面から整えることが重要ですが、法的な側面については知財専門家が間違いなく得意ですが、技術的な側面については間違いなく発明者の方が得意です。

大前提として、出願書類は知財専門家が記載するものです。法的な側面だけでなく、技術的な説明部分も含めて、知財専門家が記載します。発明者とのインタビュー結果に基づき、知財専門家が、技術の理論的な部分の文章も作成します。

それが仕事だから…でなく、発明者の開発時間を無駄に削る必要はないですし、法律的な側面から書類の充実を図ることは、やはり知財専門家でないと難しいからです。

一方で、過去にお仕事させて頂いた幾人もの発明者がおっしゃっていたのですが、

「頭で考えているときは気付かなかったけれども、明細書に文字でおこすことで技術の理論部分の誤りに気付き、それを修正できました」

という声も実際にあります。

また、正直なところ、知財専門家は、技術説明の「論理的な誤り」には気付いても、技術説明の「理論的な誤り」に気付くのは難しいです。

このような理由から、技術の理論説明については、発明者が積極的に関与することにメリットがあると思います。

2.アイデアを広げる

理論の正誤修正や理路の整理という観点ではなく、アイデアを膨らませるという観点でも、明細書執筆に発明者が関わることにメリットがあると思います。

これも幾人かの発明者の声ですが、

「フローチャートやシーケンス図など、発明の本質的な部分を説明するための図面を自分で描いていると、発明のバリエーションに気付いたり、思い付いたりした」

というものもあります。

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これら2つの理由から、発明者も原稿作成に関与した方がいいと、私は考えています。質問に対する一応の回答としては、定性的な表現ですが、次のようになります。

  • 特許出願書類は、基本的には、弁理士が殆ど書く方がよい
  • 但し、技術理論の説明は、発明者も関与した方が更によい

このように、書類の充実のためには技術の理論部分だけでなく、法律文書としての要件を満足させる必要があります。特許請求の範囲(権利化したい発明)においては、新規性・進歩性のほか、実施可能要件、明確性要件、サポート要件などの記載要件が課されるので、特許法を熟知していないと、その記載は難しいです。明細書・要約も同様です。

また、発明の本質的部分と、それを説明するために欠かせない部分とでは記載の仕方を変えるなどのノウハウも必要です。

但し、技術開発が多忙すぎる一方で、出願は可及的速やかに行いたい場合、例えば、規格案件等の場合には、ほとんどを知財専門家に任せてしまうことが適当な場合もあるとは思います。ケースバイケース、事情を総合的に勘案して決めていけばいいと思います。