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Q.006 特許のメリットについて教えてください。特許権を取得すると、その発明…

特許のメリットについて教えてください。特許権を取得すると、その発明を事業で独占実施できるというメリットがあるようですが、その他に、特許出願をしたり、特許権を取得したりするメリットは、ありますか?




弁理士からの回答

特許出願および特許権を取得するメリットとして、事業上の独占排他権とは別のメリットが、少なくとも2つはあると思います。1つは営業力の強化、もう1つは発明の核心部分が見えてくるということです。

まず、営業力の強化について。

例えば、B2Bビジネスの相手方に製品を提案するとき、その製品のコア技術について特許されているという事実は、製品の特徴部分の技術レベルが客観的に高いことを証明してくれます。さらに、製品に使われている全ての技術でないにしても、少なくともコア技術について特許されているということは、第三者から権利侵害だと言われる可能性を低くしてくれるため、ビジネスの相手にとって、安心材料になります。

次に、発明の核心部分について。

発明を創出してから、権利になるまでの過程で、先行技術調査、弁理士との議論、審査、拒絶理由通知、それに対する応答…というように、発明のどこが革新的部分なのかということを考え続けることになります。その過程は、まるで、デコボコした石が川を流れることで角が磨かれて綺麗な石になり、アイデアの核だけが残るようです。だから、特許出願~特許権の取得過程で、発明がシンプルになります。

これらが、事業上の独占実施とは別の、2つのメリットです。



回答の詳細な説明

特許出願および特許権を取得するメリットとして、事業上の独占排他権とは他のメリットとして、少なくとも2つはあると思います。1つは、特許による営業力の強化。もう1つは、発明の核心部分が見えてくるということです。

1.営業力の強化

ある技術について特許権があると、その技術や、その技術を使った製品の売り込みに好影響をもたらすことがあります。

例えば、B2Bビジネスの相手方に製品を提案するとき、その製品のコア技術について特許権または特許群を取得しているという事実は、提案している製品の特徴部分の技術レベルが客観的に高いことを証明してくれています。客観的というのは「審査官のお墨付き」ということです。

わかりやすく言うと、技術営業するときに、「この製品のコアは従来なかった新しいものです」と主観的な意見を言うよりも、「この製品には特許の発明が使われています」と客観的な情報を提供した方が、説得力をもちます。

「特許庁審査官のお墨付き」があるということは、一応、新規性も進歩性もあるということが客観的に公定力によって認められているということになるからです。

※一応…というのは、特許異議の申立というものによって審査結果がひっくり返されてしまう可能性があり、無効審判で特許が無かったとされてしまうこともあるため

2.発明の核心部分が見えてくる

もう1つは、発明してから打ち合わせ、出願、審査を経て権利を獲得するまでの間に、発明の核心部分が見えてくる、というメリットです。

まず、出願するときには、事前に先行技術の調査をしますが、その調査によって従来技術と自分の発明を比較することになり、発明のどこが従来は無かった部分なのかが分かってきます。さらに、それを知財専門家と議論することで、発明の本質・コアの部分が明確になってきます。

そして、出願すると審査官に審査されますが、捉え方によっては

高度な専門技術をもつ審査官に、どこが客観的に革新的なのかを教えてもらえる

とも言えます。また、そのときに通知される拒絶理由通知についても、

客観的に革新的な部分だけが残るように促してくれるのが拒絶理由通知

とも言えます。そして、客観的事実として従来技術と重複する部分が明らかになり、「シンプル」になったものが特許権として誕生します。

これは、発明の鎧が外されていくのではなく、「シンプル」になるということです。「シンプル」ということは、弱くなる・質素になるというものではなくて、「従来はなかった革新的な部分だけが残る」ということです。例えるなら、デコボコした石が川を流れることで、角が磨かれて綺麗な石になる感じです。アイデアの核だけが残り、その核が特許権です。

エンジニアは、発明を生みだし、発明に広がりを持たせ、発明の世界観を広げるプロです。一方、知財専門家は、アイデアをどの角度から捉えるのが最適なのか、どの部分がアイデアの本質なのかを見極めることが得意です。特許法に基づいて、課題解決に必要なものと必要ではないものとの間に境界線を引く専門家です。ですから、出願するときにも、審査のときにも、弁理士などの知財専門家のアドバイスは有効に働くと思います。