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Q.003およそ3か月前に出願した発明を改良するアイデアを思い付きました。出…

およそ3か月前に出願した発明を改良するアイデアを思い付きました。出願した当初は、「発明はこれで完成だ」と思っていたのですが、その後、出願した発明を、より良くするアイデアを思いつきました。そのアイデアも併せて出願しておけばよかった…と思っているのですが、前の出願書類に追記できますか?どうするのが良いのでしょうか? 




弁理士からの回答

すでに行った出願の書類に、後からアイデアの追記はできませんが、前にした出願から1年が経過していないので、国内優先出願(以下、国優出願)がオススメです。

国優出願によれば、前の出願書類に既に書かれていた基本発明については、前の出願日時を基準に審査してもらえるという利益を受けながら、改良アイデアもまとめて権利化し得ます。国優出願は手続も簡単です。

ただし、国優出願を濫用するのは、控えた方がいいです。国優出願といえども、新しい1つの出願なので、小さな追加アイデアを思い付く度に国優出願をしていると、出願費用と弁理士費用の負担が積み重なるからです。

重要度の小さな追加アイデアを思い付いても、もうちょっと考えたらさらなる追加アイデアも思い付きそうであれば、国優出願を待ってするのも、場合によっては良い選択と言えるかもしれません。



回答の詳細な説明

すでに特許庁へ提出してしまった出願書類に、アイデアを追記することは、残念ながらできません。しかし、前にされた出願から3月程度しか経っていないので、前の出願をベースに、国優出願をすることをオススメします。

国優出願は、もとの基本的な発明(以下、基本発明)と、改良アイデアを一まとめにして、もとの基本発明についての特許出願とは別に、出願を「しなおす」ものです。

「国内優先」という特別な名称が付いていますが、一つの特許出願であることには変わりありません。願書に国優出願であることを示す所定事項を記載し、基本発明の出願日から1年以内に出願手続をする等の方式を守ることで、国優出願と扱われます。

なぜ、通常の特許出願ではなく、国優出願という形式で出願しなおすかというと、国優出願には「特別な利益」があるからです。それは、ベースとなる前の出願の書類に既に書かれていた発明については、前の出願日時を基準に、特許要件を審査してもらえるという利益です。

これは審査において有利です。新規性・進歩性などの特許要件を考慮すると、誰よりも先行して出願できたかが重要です。重要というよりも、新規性については、出願日の先行で勝負が決してしまいます。

特許制度ほど、先行者利益が顕著な社会システムは、他にないです。だから、前にした出願に、もともと記載してあった基本発明は、前の特許出願にしたとみなされた方が良いのです。

例えば、この3か月の間に、前の出願にもともと記載してあった基本発明を、他の誰かが出願したケースを想定してください。この場合に、もしも追加アイデアを含めて一まとめにしたいからといって、通常出願として手続しなおす選択を採ってしまうと、その誰かとの間で出願の先後が逆転し、基本発明について特許権者になれなくなります。

国優出願の実際の手続は難しくありません。前の出願書類のドキュメントファイルに、改良アイデアを追記して新しい出願書類を作成し、出願手続をするだけです。留意点は諸々ありますが、重要なのは、願書に所定事項を記載することと、前の出願から1年以内であることです。

ただし、国優出願を濫用するのは、控えた方がいいと思います。

国優出願といえども、新しい1つの出願なので、通常の出願と同様の費用がかかります。特許庁への手続だけなら14,000円なのですが、さらに、弁理士を代理人として手続きする場合には、その報酬も併せてかかってきます。

追加アイデアを明細書に追記するだけではなく、それによって特許請求の範囲を見直さなければならないときもあります。もちろん、基本発明のときよりも、弁理士費用の方は低額になる傾向はあります。

それでも、国優出願を濫用すると費用的に負担が積み重なるので、重要度の小さな追加アイデアを思い付き、もうちょっと考えたらさらなる追加アイデアも思い付きそうであれば、国優出願を待って行うのも、場合によっては良い選択と言えるかもしれません。

また、国優出願の期限は、前の出願から1年以内ですが、追加アイデアのブラッシュアップや書類作成にも時間はかかるため、期限ギリギリにならないようにした方が余裕をもって対応できると思います。

他にも、国優出願をするにあたって、考慮しなければならない判例などもあります。有名なものであればピジョン事件というものがあります。実際に委任代理契約をする弁理士や、担当の知財専門家に相談しながら、国優出願をする手順・内容を決めるのが良いと思います。